渡辺くん、こっちを向いて【2】 (ページ4)

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53話ページ4

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「せっかくモテ男2人とお祭り行くんだから浴衣着て行こ！」

千夏の一言で私たち女子組は浴衣を着ていくことになった。
渡辺くんが彼女とお祭りに行くことをわかってか、あえて明るく振舞ってくれているんだろうな。

着付けをしてくれた千夏のお母さんと髪型を可愛くセットしてくれた千夏はかわいいかわいい、と褒めてくれたけど、やっぱりどこかで渡辺くんのことが引っかかってしまって、上手く笑えなかった。

準備をする時間はあっという間に過ぎていって、深澤くん佐久間くんとの待ち合わせの時間に間に合うためには家を出なくてはいけない時間になってしまった。

「大丈夫？……じゃ、ない……よね」

家を出て歩き出すと、千夏は眉を下げて私に訊ねた。
心配をかけてしまってはいけない。そろそろ切り替えないと。

「……大丈夫。お祭り自体はめっちゃ楽しみなんだよね。せっかくだから楽しむ！」
「うん、楽しもう！Aはなに食べたい？」
「ぜっっったいにわたあめ食べる」

〜〜

「お待たせ！」
「やっほー。お、浴衣じゃん」
「お！2人ともかわいいー」

「ごめんね、また待たせちゃった」

またしても待ち合わせで待たせてしまった深澤くんに謝ると、ひらひらと手を振って、「全然いいのよ」とにこにこと笑う。

「それより浴衣、似合ってんね。かわいい」
「深澤くん本当に褒めるの上手だよね。ありがとう」

さらっと褒めてくれるの本当にすごいよなあ。
モテるのも頷ける。当の本人はというと「あらー、真に受けてないね？」と笑っている。

「屋台、すげえいっぱいあんね。2人とも何食べたい？」

と佐久間くんが弾んだ声できょろきょろと並んだ屋台を見渡した。
千夏が「Aはまずわたあめ？」と声をかけてくれて、わたあめを初め、私達は屋台を存分に楽しんだ。

「お、そろそろ花火の時間じゃない？」

深澤くんが時計を見て呟いた。深澤くんと佐久間くんは毎年花火を見ている特等席があるそうで、そこに案内してくれるのだとか。

わくわくしながらついて行くと、そこは山の裏道のようなところで、少し坂になっているので花火が良く見えそうだった。
……木は多いけど。
こんなに綺麗に見えるところなら花火楽しみだな。
そう、思っていると

「……ん？あれ、翔太じゃない？」

と佐久間くんが指さした。