い ページ8
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"残念ながら、お父様が孤独死されていました"
その後の事は覚えていない。
トムさんが心配してくれていたのを、大丈夫、と返し、家に帰したところまでは覚えている。
後日、送られてきていた住所に向かう。
数年前とは打って変わった、古びたアパートだった。
家に入ると、鼻をつんと刺激するような匂いに包まれる。
父の、生きた証だ。
「______Aさん」
ついに、幻聴でも聞こえるようになってしまったのか。
気の滅入っている私にうんざりしながら歩みを進める。
だが、その声は本物だった。
「____トム、さん?」
そう、そこには彼がいたのだ。
アパートの屋上に出る。風が心地よくて、空気をいっぱいに吸い込む。
トムさんの仕事は、特殊清掃だったらしい。
偶然も重なり、驚いた。
「____Aさんの父親、だったんですね」
白い防護服に包まれた彼は、いつにも増して透明感がある。
「この前はごめんなさい。唯一家族だと思っていた父だったから、動揺してしまって___その、」
トムさんが、何かを差し出す。
「Aさん、お父様からです」
そこには、Aへ、と書かれた手紙が一通。
恐る恐る中身を見る。大きく一言。
幸せになれ!!
「____っ、う...」
やはり、兄も父の子だな、と思う。
大切な人を失うことの辛さ、そして孤独を、ひしひしと感じる。
そして、間も無く誰かに抱きしめられている、そう理解した。
「Aさん、僕が守ります。」
僕の愛は、どんな深海よりも深い。誓います。
私は彼を抱きしめ返していた。
この時のなんとも言えない刺激臭は、きっと、ずっと忘れられない。
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かりさ - 完結おめでとうございます!もう読んでいくたびに愛が溢れていき、余計に吐夢くんの虜になっていきました!完結した嬉しい気持ちともっと見たかった気持ちがもう心いっぱいに広がっています!他の作品でも頑張ってください!応援しています! (4月3日 23時) (レス) @page21 id: 68e899d673 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - マスコットさん» ありがとうございます。お話もかなり終盤に差し掛かってきましたので、これからも楽しみにしていてください^^ (4月1日 23時) (レス) id: abe392a41c (このIDを非表示/違反報告)
マスコット - 初めまして!読んでファンになりました!めちゃくちゃ素敵です!楽しみにしてます!大好きです(*^^*) (4月1日 3時) (レス) id: f0407dfffe (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - かりささん» ありがとうございます。マッチング、素敵な映画でしたね^^自分なりに吐夢君の心情など表現しているので、気に入って頂けているのなら幸いです。ありがとうございます! (3月27日 21時) (レス) id: 8a6cead0aa (このIDを非表示/違反報告)
かりさ - 初めまして!私はマッチングの映画を見てからこの作品を見たのですが、吐夢くんの愛の重さやストーカーの恐怖が現れていて良いと思いました!これからまるさんの体調に合わせて更新頑張ってください!応援しています! (3月27日 14時) (レス) id: 68e899d673 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まる | 作成日時:2024年3月24日 0時